情シスの転職は、IT業界の転職と同じ進め方で問題ないところもあれば、明らかに違うところがあります。一般的な転職での進め方に加え、情シスへの転職で押さえておくべき点、その上でのコツを、現在も情シスで働いている立場の人間が説明します。
筆者は3つの会社の情シスで、情シスの採用責任者として年間を通して採用面接を行なっています。3社の情シスに入社をするときは、応募する側として転職活動を経験しています。採用される側する側両方を経験していますので、そのあたりのサイトよりは信頼がおけると自負しております。
転職のステップは大きく次の5つになります。手っ取り早く、目次から「気になるところだけ確認」でも読めるような構成にしてあります。
Step0.はじめに(情シス転職の難しさ)
情シス転職難しさはいろいろありますが、多くの人が勘違いしていることにより難易度があがっていることがあります。それは、転職先として考えている会社の理解が不足しているから、難しくなるということです。
必ず理解しなければならないポイントは2つあります。
ひとつめは、情シスはIT業界ではなく、企業の中の一つの組織であるということ。二つ目は、多くの場合、残念ながら情シスはエンジニアのためにあるわけではないということです。
IT業界でエンジニアとして働いている場合、所属する部門はプロフィットセンターになります。IT業界といわれるように、エンジニアが開発した製品や技術力が売り物になり、それが会社の売り上げや成長につながります。
情シスは会社の情報システムに関する業務を担当する組織であり、コストセンターに分類されます。
特にIT業界から転職を考える方が、これを理解せずに情シスへの転職を考えている場面をよく見ます。まずは情シスという組織・位置付け・定義を理解し、自分のキャリアとして、方向性があっているかどうかを考えることが重要です。
Step1. 準備
自己分析
かならず次にあげる4項目は事前に整理しておきましょう。
- できること
- やりたいこと
- 転職理由
- 自分の強み
この4項目は、転職をすすめていくうえで、もっとも基本となる項目です。また、情シス面接では実際に聞かれる可能性も高いです。
情シスの面接では、情シスのみならず、それ以外の部門の人が面接官になるケースが多いです。情シス以外の部門の方はITの知識が高くありません。結果、面接でとても基本的な質問をせざるを得ないという背景があります。
これは何気にIT業界から転職を考える人にとってはトラップで、引っかかる方多いです。なぜなら、IT関連の質問対策しかしてこないからです。
情報収集
転職サービス
転職サービスには2種類存在します。「転職サイト」と「転職エージェント」です。
「転職サイト」はウェブで求人を自分が見つけ、自分で進めるというもの。「転職エージェント」はあなたと企業のあいだに、エージェントと呼ばれる方がはいり、求人情報の提供や調整を行います。
現実には、転職サイトという言葉と転職エージェントが同じ意味で使われていたりします。呼び名はあまり気にすることはなく、重要なのは企業とのあいだにエージェントが介在するかどうかです。
おすすめのやり方は両方のサービスを使い、「情シス案件」の母数を増やすということ。実際に応募する際は可能な限りエージェント経由にするということです。
実際の応募でエージェント経由をお勧めしたい理由は次の通りです。
- 入社時期や年収などの交渉を代行してくれる
- 推薦状を書いてくれる
- 面接でのフォローをしてくれる
面接対策や書類チェックなどをしてくれるといったことももちろんおすすめなのですが、エージェントがいることにより自分ひとりだけでは絶対にできないサポートをしてくれます。これらはエージェントという第3者だからこそできることです。
大リーグの年俸交渉とかで、エージェントが・・・とかニュースを見たことがあると思いますが、それと同じです。
業界の理解
多くの人が勘違いしているのですが、情シスはIT業界ではないです。事業をおこなっている会社のIT部門に転職を考えるわけです。少なくとも、次の3つはおさえておきましょう。
- 受けようとする会社の業界
- 受けようとする会社の業界ポジション
- ビジネスの流れ
情シスの理解
情シスの理解を正しくします。理解がごっちゃになっている方がいらっしゃいますが、ます情シスはIT業界ではありません。その上で、次の3つを理解しましょう。
- 情シスとは?
- 情シスという組織の業務・仕事内容
- 情シスで働く人はどんな仕事をするのか?
転職で重視することの整理
転職で重視することは事前に明確に決めておきましょう。思考の整理のポイントは、仮に興味がある全ての企業から内定をもらったときに、その順位を決めるのはなにか?です。
年収・やりがい・残業時間などいろいろあると思いますが、ひとつだけ明確に決めます。
転職活動をしていると、場合によっては、自分の想像を上回る年収を提示されることもあります。その条件で入社を決めるのも良いですが、もし、転職で重視したいことが「やりがい」だったらどうでしょう?そう、あとで後悔しないために、しっかりと決めておく方がよいです。
資料作成
履歴書と職務経歴書を作成します。テンプレートは転職サイト等から無料でダウンロードできますし、それで問題ないです。実際、多くの方がそのテンプレートで応募しています。
応募する企業ごとに職務経歴書を作成する必要はありません。作成したものは、できれば印刷して最終確認をするのがよいでしょう。誤字脱字、改ページの場所が適切か、内容に嘘はないかなどを確認します。
職務経歴書は自身の人生がかかったプレゼンテーション資料です。そんな重要な資料を適当につくる人は、普段の仕事の質も悪いです。
「だれでも取れるような資格」が記載されている場合は幼稚な印象を与える可能性が高いです。皆様の判断にお任せしますが、ある程度名前が通っている資格でないのであれば、記載しない方が良いです。
Step2. 転職サービス登録
転職サービスに登録します。どこがおすすめか?結論、情シスの求人を一定数持っているところであれば、どこでもOKです。
なお、転職サイト比較ランキングは注意が必要です。それっぽいラインキングになっていますが根拠がなかったり、最悪のケースはアフィリエイトに依存した順位の場合もあります。
次にあげる項目は、おさえるべきポイントです。
- 転職サイト比較ランキングは根拠がないのがほとんどなので注意して読む
- 情シスに関する求人の検索ワードは「情報システム」と「社内SE」
- 情シス求人の母数を増やすため3〜5社程度に登録
- エージェントとの相性はとても重要
Step3. 求人の選考・応募
転職サイトであればご自身で求人情報を探します。転職エージェントであれば、エージェントからあなたにあった求人が紹介されます。
話を進めたい求人があれば正式に応募します。企業側にあなたが作成した履歴書と職務経歴書が送られ、書類選考にすすみます。無事、書類選考が通過しますと面接に進みます。
転職エージェントをつかっている場合で、紹介された求人が合わない場合、その理由をしっかりとエージェントに伝えてあげると、そのフィードバックを受けて、エージェントはよりあなたにあった求人を紹介します。
少し面倒に思われるかもしれませんが、このエージェントとのやりとりをいかに丁寧にやるかが、あなたに合った求人と出会えるかの確率をあげることになります。
Step4. 面接
面接準備
情シスの面接はIT部門以外の部署からも面接官として出てくる可能性があります。その場合、ITのことではなく、とても基本的なことを聞かれます。
多くの場合、採用側が基本事項として聞きたいことは共通しており、それが次の5項目です。そして、この5項目が明確に答えられないと、面接官の誰かしらがNGを出す可能性が高いです。
- 「できること」と「やりたいこと」
- 「募集要項」と「企業情報」の情報整理
- 「転職理由」と「志望動機」
- 自分の強み
- 質問
面接ではどんな人が面接官としてでてくるのかは、エージェント経由で確認ができます。是非、情報を入手して面接対策にいかしたい。ちなみにこれは、転職エージェントを使う場合のメリットの一つです。
面接
最近ではWeb面接も一般的になりました。服装は最低限のビジネスマナーを意識。Webでの背景画像も考慮したい。シンプルなものが良いです。
Zoom、Teams、Google meetとツールはいろいろあります。普段使い慣れていないツールが指定された場合は、できる範囲で動作確認はしておいた方が良いです。Web面接がはじまったのに、音声が聞こえないとかの事象が発生すると焦ってしまい、その後良いことないです。
面接終了後には、エージェントに連絡して感触やフォローしてほしいことなど伝えましょう。アドバイスをくれることもありますし、場合によっては、エージェントが企業側とコミュニケーションをとってフォロー含めて動いてくれます。企業側の面接結果を聞けることもあります。
Step5. 内定・退職手続き
面接も無事最終を通過しますと、採用条件が企業側から提示されます。内容をしっかりと確認しましょう。不明点や交渉したい点があれば、ここでもエージェントが力になってくれます。遠慮なく伝えましょう。
特別な理由がない限り、内定をもらってから退職手続きです。企業側はだいたいすぐに来てほしいといいますが、それに振り回されなくて大丈です。本当にほしい人材であれば、非常識な期間でない限り、企業も待ってくれます。
以上、情シスへの転職を説明をしてきました。情シスはITをつかって事業に貢献すると言う、非常にエキサイティングで面白い組織です。IT業界から転職して活躍している人もたくさんいます。
「情シス」というその特殊性が理解できると、ずいぶんと有利に手職活動をすすめることができるはずです。情シスの転職を考えた時の参考になると幸いです。
目次
・自己分析
・情報収集
・転職で重視することの整理
・資料作成
・面接準備
・面接