【情シスとは?】現役IT部門責任者が3社・10年の経験から徹底解説

【情シスとは?】現役IT部門責任者が3社・10年の経験から徹底解説

3社の情シスを経験し、3社とも情シスという組織の立て直しをしてきました。現在も現役で、情シスの責任者として仕事をしています。世の中の情シスの説明は断片的だったり嘘が多いです。実際に情シスで働いている立場の人間が情シスを説明します。

興味があるところだけでも読めるように編集してありますので、目次からどうぞ。

情シスとは?

情シスの定義

「情シス」とは「情報システム部」もしくは「情報システム本部」の略です。IT部門と呼ばれることもあります。自社のシステム・IT機器・ネットワークなど、「情報システム」に関する業務全般を担当する組織です。

情シスという組織の業務・仕事内容

情シスの業務・仕事内容というのは会社に依存するため、なかなか「これだ」と明確に説明するのが難しいという背景があります。説明するには考慮すべきことがあり、これを無視して情シスを説明するのは正確性に欠けます。それは「会社規模」です。

情シスと言う組織が担当する業務・仕事内容に一番大きな影響を与えるのは会社の規模です。その規模によって「直接支援中小企業型」「IT全部一般型」「基幹中心大企業型」3つに分けることができます。これは、会社規模によって情シスが担当する業務・仕事内容が変わるということを意味しています。

基本的に情シスについて会話する場合、「会社の規模」を意識していないと、話が噛み合わないことが多いです。おなじ「情シス」について会話していても、実はイメージしている「情シス」がずれていることはよくあります。

この会社規模で情シスをまとめたのが次の絵です。

直接支援中小企業型

人数がひとりもしくは少人数で情シス業務を行うケースです。場合によっては、情シスと言う組織は存在せず、総務部のなかにIT担当もしくは兼務と言う形で存在します。

IT・デジタルという名前がついたら全てを担当します。会社の規模が小さいため、セキュリティやガバナンスと言う業務はあまり意識されません。

IT全部一般型

課・部として存在する場合、多くはこのケースになります。全社のIT全部を担います。会社の組織として、組織間の業務の整理がついていることが多いため、会社のWebサイトは広報や営業部門。OA機器は総務部門が担当することが多いです。

情報セキュリティを意識しなければならず、情シスの業務として正式に「セキュリティ」を担うのも特徴的です。

基幹中心大企業型

会社の規模が大きくなると、このケースになります。特徴的なのは、業務部門にIT担当が存在し、業務システム担当として専任で企画・開発・運用・保守をします。

結果として情シスは、全社が利用するシステム(人事・給与・会計など)とインフラ、IT機器を中心に見ることになります。

会社規模がおおきく上場会社も多いため、ITガバナンスを担うのも特徴的です。

情シスの業務内容とは?実は知られていない会社規模による違い【3つの種類と特徴】

情シスと社内SEとSEの違い

情シスとは、自社のシステム・IT機器・ネットワークなど、「情報システム」に関する業務全般を担当する組織です。

社内SEとは、自社のために働いているシステムエンジニアのことを言います。社内SEは自社のために働いていれば所属部署は関係なく、全て「社内SE」と呼ばれます。よって、情シスはもちろんのこと、情シス以外の部署にも社内SEと呼ばれる人はいます。

SEとは、他社のために働いているシステムエンジニアのことをいいます。他社というのは一般的にお金を払ってくれるお客様のことを指し、何かしらのIT案件の受注をした後、そのプロジェクトだったり運用・保守といった契約の中で働きます。

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情シスで働く人はどんな仕事をするのか?

どんな仕事をするのか?

おおむね情シスには5つの担当(役割)が事実上存在します。難しいのは、組織になっていない情シスだと、この切り分けができておらず分かりにくいこと。

例えば、システムごとに「企画・開発・運用・保守」として担当制のところもあれば、そんな整理すらついていないところも多いです。しかし、断言します。ちゃんと整理すると5つの担当(役割)に整理できます。

【部門長】
全体をまとめ意思決定をする

企画担当】
事業上の課題を解決する

【開発・保守担当】
システムを維持・改善する

【ヘルプデスク担当】
問い合わせに対応する

【インフラ担当】
会社・事業をITで支える

5つの担当(仕事)は、UISSをベースとして整理しています

情シスの仕事内容とは?IPAの公式資料から5つの担当に分類【徹底解説】

情シスにあうひと(働くことの面白さ)

情シスはIT業界には分類されません。IT業界からの転職者も多いですが、これをしっかりと理解する必要があります。情シスと言う組織の役割・ご自身の考えの方向性があうと、非常にマッチ度が高く楽しめる可能性が高いです。

ITが好きな人ではなく、ITでビジネスに貢献したい人

情シスは、事業をおこなっている会社の中でITで貢献する組織です。つねに、効率化や売り上げ向上の最終目標に対してどうするかを念頭に置く必要があります。

エンドユーザーと会話が必要ですし、ポジションが上がってくると会社の中計や事業部門の計画といったことも理解する必要があります。大変ですが、ビジネスの根幹の部分にたずさわれ、とてもエキサイティングです。

ITが好きなかたは、おおよそIT業界が合っています。ITは好きだけどあくまでも手段として割り切り、どうビジネスに生かすかということに面白みをもてる方はとても楽しめます。

中長期でものごとを考えたい方

システムは導入して終わりではないです。効果があらわれるには、ある一定の時間が必要です。また、導入直後からシステムは古くなります。システム導入は、成果まで意識すると、ある程度の長期スパンで考えなければなりません。

中長期視点で、品質・コスト・期間のバランスを取りながらシステムを成長させていく。その過程では、さまざまな優先順位づけや判断が必要になります。

IT業界にいると、どうしても「期間」と言う制約の中でプロジェクトを完遂させなければなりません。情シスで働くということは、この「期間」を決められます。最終目標の達成のために、期間を延ばす・縮めるといったことは、IT業界にいるとできないことのひとつです。

全体を俯瞰して考えたい人

情シスではたらくと、会社全体のシステムが理解できます。個別最適ではなく、全体最適でシステム全体を考えられます。ポジションにもよりますが、5年〜10年先をイメージして、今どうするかを実際の計画に落とし込めます。

全体を俯瞰するためには、さまざまなITの知識が必要ですし、一人ではできません。多くの協力してくれる情シスのメンバーやベンダーなどと、会社の事業に貢献という最終目標のためにどうするかを考えるのはとても楽しいです。

それらはIT戦略やIT部門の中期計画に落とし込まれ、そして実行されます。

情シスで働くうえでの実際の苦労

情シスと言う組織はコストセンターです。その組織の特性上、どうしても苦労はあります。

教育制度がない

情シスは会社のIT・システムを担う組織です。IT・システムの知識は簡単に習得することは難しく、日々勉強をしなければなりません。しかし、大きい会社だったり部門責任者が教育に熱心な場合を除いて、多くの情シスで教育制度はないと思っていた方が良いです。

情シスはコストセンターです。会社としてはお金を稼ぐプロフィットセンターに人材教育・育成の投資をするのが一般的です。

IT業界でSEに教育をするのは、彼ら・彼女らはプロフィットセンターに所属するからです。

情シスのトップ次第で天国にも地獄にもなる

情シスだけの話ではないのですが、組織のトップにどんな人がつくかによって楽しさ・苦しさは依存します。

IT・システムと言う専門性をもった組織という特徴から、よくある最悪のパターンが、「IT・システムを知っているが仕事ができない人」が組織のトップになった場合。そもそも仕事ができないわけですから、うまくいくわけがありません。情シスはこのパターンにおちいる傾向が高いです。

「情シス 無能」はよくネットで検索される言葉の一つですが、情シスは組織です。無能と感じた場合、それは組織の問題である可能性が高く、多くは部門責任者にあることが多いです。

【情シスの組織運営】抑えるべき11の原理原則と4つのステージ

まわりからの理解は得にくい

IT・システムは専門性が高いからこそ、周りから理解は得にくいです。「こんなに頑張っているのに」と思いながら働いている方は多いです。

IT・システムと言うのは長い期間を経てリリースを迎えます。そういった背景から、どうしても情シスで働いていると「プロセス」に目がいきがちなのですが、まわりは残念ながら「結果」しか見ていません。ここに大きなギャップがあります。

これを自分の中で割り切れると、まわりとのコミュニケーションの仕方も変わり、一歩前に進むことができます。実際、このあたりが割り切れないために「評価されない」といった形で悩んでいる人は多いです。

情シスのネット記事について

情シスに関するネットの記事は大きく3つに分類されます。信頼度が高い順位は❸>❶❷です。

  1. アウトソーシング請け負い会社
  2. 転職サイト
  3. 個人

アウトソーシング請け負い会社は広告記事が中心、転職サイトはアフィリエイト狙いが多いですので注意が必要です。目的はそこから契約やお金を稼ぐのが目的です。情報が断片的だったり誇張されていることが多いです。

個人サイトも情報が断片的だったりその人個人の経験に依存しますが、情報としては実体験をもとにしていますので、事実です。

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以上、情シスの説明をしてきました。情シスはITをつかって事業に貢献すると言う、非常にエキサイティングで面白い組織です。しかし、さまざまな理由から苦労もあります。実際、組織として機能していない情シスがあるのも事実です。

既に情シスで働いている人は、今後の組織のあり方の参考に。情シスに転職を考えている方は、転職先の情シスを知る上でのヒントにしていただければ幸いです。

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