情シス業務のアウトーシングを進める5つの手順【よくある失敗3選付き】

情シス業務のアウトーシングを進める5つの手順【よくある失敗3選付き】

情シス業務のアウトーシングを進める5つの手順

情シス業務のアウトソーシングで悩んでる方は多いかと思います。どの業務をアウトソースしたらいいのか?そもそもどう進めるのか?考えなければならないことは多いのですが、断言できるのは、早いうちにアウトソーシングの検討は着手しておいた方が良いです。

基本の手順を踏めば効果は必ず出ます。この手順を踏まないと、中途半端なアウトソーシングとなり、そしてその中途半端な状態になかなか気がつくのが難しくなります。

5つの手順は次のとおりです。

  1. 業務の棚卸し
  2. アウトソーシング対象の選択
  3. 手順書作成・SLAの決定
  4. トライアル
  5. 本番運用

会社が潰れそうだったり縮小に入っているといった特殊な事情を除けば、システム・ITは増えることはあっても減ることはありません。それは、情シス業務が右肩上がりに増え続けるということを意味します。それらを自社だけでやるのは限界があります。会社が順調に大きくなっているのであればなおさらです。

情シス業務のアウトソーシングのネット上の記事のほとんどは、その仕事を請け負いたい会社が書いています。しっかりと記載している記事もありますが、多くは仕事を請け負いたい側の目線で都合よく書かれている。

これが多くの勘違いを生み出します。記事の内容をそのまま鵜呑みにせず、内容の半分は「広告だ」程度に見ておいた方が良いです。

さて、手順を説明する前に、理解しておくべき2つの基本があります。先にそれを説明します。

【基本1】情シス業務をベースにアウトソーシングを考える

情シス業務のアウトソーシングを考えるときに、多くの方は「どの業務をアウトソーシングすればいいか」という発想で考えるはずです。実際、ネット記事にも「ヘルプデスク」「キッティング」「サーバー運用」といった業務名で書かれています。

この考え方で検討を進めるのは別に悪くないのですが、一点注意しなければならないことがあります。それは、アウトソーシングを請け負うベンダーのサービスメニュー(業務名)をベースに考えてはいけないということです。

情シスという組織の業務・仕事内容は会社によって様々。画一的な定義はできません。世の中全く同じ業務・仕事内容を持った情シスは一つもないのです。(詳しく知りたい方はこちらをどうぞ)一方で、アウトソーシング業務を請け負う側は、様々な会社の情シス業務・仕事を請け負います。

さて、ここで考えてみましょう。アウトソーシングを請け負うベンダーは、一つ一つの会社に丁寧に合わせて、その業務を請け負うでしょうか?答えはNo。当たり前ですよね。それをやっていたら効率が悪い。会社に合わせるより、ベンダー側で「標準」とされる業務を決めて、それを「サービスメニュー」として提供した方が効果が良い。

このことを理解していないと、中途半端なアウトソーシングとなり、期待した効果が出ないということが発生します。世の中のネット記事を見ていると丸っとアウトソーシングできそうなイメージをいだきますが、実はそうではないのです。

【基本2】アウトソーシングしてはだめな業務があることを知る

ベンダーのサービスメニューをベースに考えては危険なことは理解できたかと思います。つまり、情シスの業務をベースに考えるということになるのですが、ここにも注意点があります。

それは、アウトソーシングして良い業務とダメな業務があるということです。情シスの業務を次の4つに分類して考えます。そして、アウトソーシング対象とする領域は「B」になります。

たとえばアウトソーシングの検討をすると早い段階で検討対象となる「ヘルプデスク業務」を例に考えます。厳密に定義すると、ヘルプデスク業務もいろいろと内容はあります。そして、アウトソーシングして良いのは「ヘルプデスク業務の問い合わせ一次対応」になります。

一方で、ヘルプデスク業務の中でも、どんな問い合わせが多いかを整理・分析して情シスの活動に生かす・事業部門へ情報展開するといった活動は「A」になります。これは社員がしっかりと業務を行う必要があります。理由は2つ。

一つ目は、非定型業務なのでそもそもアウトソーシングできない。

二つ目は、「考える」という業務であり、情シスとして本質的にやらなければならない領域だからです。

情シス業務のアウトソーシングをすすめる5つの手順

ここでは、ベンダー選定はしてあるという前提で話を進めます。アウトソーシングを考える場合、次の5つの手順を踏むことになります。

Step1. 業務の棚卸し

一番の肝で一番大変で一番難しいです。そして、多くの情シスがこの「業務の棚卸し」を軽視しています。情シスという組織は、会社によって千差万別です。それは、まったくおなじ情シス業務はない。PCキッティング一つをとっても、標準仕様やセキュリティの考慮度合い、月間のキッティング台数、故障時の対応レベルなどバラバラです。

だからこそ、しっかりと情シスの業務の棚卸しをして、どこをどの程度アウトソーシングするかを決める必要があります。

アウトソーシングを早いうちに検討した方が良いと書きました。なぜか?アウトソーシングをしようと考えた背景には、情シス業務が増えて回らなくなってきていることが多いはずです。

残念ながら、その時点で情シスの業務はすでに混沌としていて、業務の棚卸し自体に大きなパワーをかけなければならない状況になっているはず。今からでも遅くないです。アウトソーシングを念頭に置いて、日々の業務を少しずつ整理していきましょう。

よくある失敗 その1:やるだけ無駄

業務の棚卸しをせずにアウトソーシングをすると何が起こるか?先にあげた4つのマトリクス「A」「C」の業務をアウトソーシングするというのが典型的なケースです。

「A」の場合は、本来社員がやらなければならないことを、アウトソーシングすることになります。十分な成果はでないのと、未来の情シス組織の弱体化のはじまりを意味します。「C」はそもそもITに関する業務ではないにも関わらず、高いお金を払っているという状態です。もったいない。

Step2. アウトソーシング対象の選択

業務の棚卸しができたら、次に行うのはアウトソーシングする業務を選択します。重ねてですが、ここで重要なのは、アウトソーシングを請け負うベンダーのサービスメニューをベースに考えるのではなく、あくまで情シスの業務をベースに考えるということです。

よくある失敗 その2:効果が出ない

すでに述べていますが、ベンダーのサービスメニューをもとにアウトソーシング対象を決めていくというアプローチを採用すると、だいたい失敗します。

このケースは実は問題の根が深く、多くの場合は効果が出てないこと自体に気が付かないことが多いです。しっかりと情シスの悩み・課題を理解してくれるベンダーを選びたいです。

Step3. 手順書作成・SLAの合意

アウトソーシングする業務の手順書を作成し、SLAを決めます。ちなみに、手順書がなければSLAも決まりません。

よくある失敗 その3:品質が悪い

手順書を決めず丸っとなんとなくお願いするのは、楽ですがとても危険です。一番の問題は、問題が発生したときの責任の所在が曖昧になったり、原因究明に時間がかかるということ。最悪、原因がわからないといったことが発生します。

アウトソーシングを検討する情シスは基本的に忙しいため、早くアウトソーシングしたくなるでしょう。しかし、グッと我慢。

もし、手順書もSLAも決めずアウトソーシングしている業務で何も問題が起こってない情シスがあったとしましょう。断言しますが、それはラッキーなだけで、いつかは事故がおきます。

Step4. トライアル

さて、いきなり本番運用に移行する情シスもありますが、できればトライアル期間をもちたい。そこで、いろいろと不足している点や気づきがあるはずです。

手順書の修正やSLAの妥当性確認もできます。期間は対象業務によりますが、目安は1ヶ月。アウトソーシング対象業務がちゃんと回っているかや週次定例・月次定例といった一通りの業務が行えるからです。

Step5. 本番運用

その名の通り、本番運用です。ちなみに、本番運用で月次報告がないようなアウトソーシングを請け負うベンダーは注意が必要です。業務を進めていると、いろいろと確認事項やトラブルといったことが発生するはずです。

それをしっかりと報告するのは責務です。まれにしないベンダーがありますのでご注意を。確実に問題が隠蔽されて、あなたの知らないところでどんどんそれは大きくなります。


情シス業務のアウトソーシングがうまくできれば、業務品質があがり、情シスで働くメンバーのモチベーションもあがり、組織が強くなるという正のサイクルになります。ぜひ、アウトソーシングを検討するうえでの参考にしてみてください。

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