【Layer2:会計の基本】数字で他部署と会話をするための共通言語、情シス管理会計講座

会計は会社の共通言語であり、数字で語ると説得力は爆上がり

情シスが理解されない・されにくい理由は実は明確

 まず声を大にして伝えたいこと。多くの情シスがIT用語ばかりを並べて、会社の共通言語である会計の知識や用語で会話をしていないこと。どんなに魅力的な提案・効果的な施策でも、共通言語で会話しなければ、相手は理解できません。

 例えばあなたが、絶対に自信ある、そして誰がどうみても効果がある案があったとします。実績もありますし、第3者からみてもお墨付き。でも、同僚はみんな外国の人で日本語が話せない。日本語がわからない人たちに、一生懸命日本語で説明しても伝わりません。

 多くの情シスがこれをやっています。言い方を変えると、ちゃんと仕事をやっている情シスは、これをやるだけで説得力も信頼度も存在感も爆上がりです。

 これまで3社の事業会社で情シスの予算策定・管理やプロジェクト予算の取得などを行ってきました。細かいところは会社それぞれで違いはあるものの、だいたい抑えるべきポイントは同じです。

専門性が高いからこそ、会社の中での共通言語を使おう

 会計の知識・用語を使うと、巷でよくある「情シスは何を言っているのかわからない」から脱却できます。全く相手にされなかった経営陣が耳を傾けてくれます。営業部門とより密な連携が可能になります。

 会計の知識は、一度覚えれば、どこでも通用します。世界中で基本的な考え方は同じです。ITに詳しい人ほど、知っておくべき。あなたの価値を伝える有効な手段です。会計本は世の中多く出ています。ただ、いきなり学ぼうとすると少しハードルが高いのも事実。

 ここでは、「情シス管理会計」として、情シスだからこそ知っておくべきこと。どんな場面で知識や用語を使うのかを具体的事例を交えて説明します。会計知識を深めるために、そして皆様の情シスが会社の中でより存在価値が高まる第一歩になれば幸いです。

 なお、これを読むとネットでよく見る、なぜ「情シスはコストセンターと見られがち」論がおかしいかが腹落ちして理解できます。断言しますが、おかしいものはおかしい。言いたいことはわかりますが、現状を正しく認識するからこそ、次があるのです。

会社での情シスの立ち位置を理解すると、会計知識の必要性がわかる

情シスの立ち位置

 よく理解されずに説明している記事が世の中多いですが、「IT企業やITコンサル」と「情シス」は明確に役割が違います。

 IT企業やコンサルは、ITに関する知識や製品を売って、売り上げを上げる会社。お客さまは自社の外にいます。情シスは、何かしらの事業を行っている企業の中で、従業員が使うITやシステムの企画や保守・運用など行う組織・部署です。お客さまは従業員となります。

 最近は特にビジネスとITはかなり密接です。営業部門がお客様に提供しているサービスについて、ITまわりに関してもサポートしたりします。これが大きくなると、情シスとは別に、営業部門の中にIT担当やIT部門ができたりします。

 しかし、どこまでいっても情シスのお客さまは従業員。直接的に売り上げをあげることはありません。もし、直接的に売り上げを上げたのであれば、それはもう情シスではありません。

【情シスとは?】現役IT部門責任者が3社・10年の経験から徹底解説

会計の超基本で、必ず理解するべき「収益」「費用」「利益」

 あなたはあることに関して専門家であり、とても知識を持っていたとします。それをまとめた1冊の本、これが千円で売れました。さて、質問。千円まるまる儲けになるでしょうか?答えは「No」。

 本にするためには印刷代、紙代、製本代、本を送っているのであれば送料がかかっているはずです。これらは会計用語で「費用」と言います。

 儲けのことを「利益」。利益の元になる収入のことを「収益」といい、計算式は次のとおり。

収益 ー 費用 = 利益

 この計算式は絶対で、個人でも会社でも変わりません。例えば、千円で売れた本。費用に800円かかっていたとすると利益(儲け)は200円となります。

1000円(収益) ー 800円(費用) = 200円(利益)

 これが、収益・費用・利益の関係性になります。これを細かく分けて丁寧に整理したのが、PL(損益計算書)になります。会社は、収益をあげて費用をさげ、結果として利益を最大化する。これが基本的活動となるのです。

とにかくよく出てくる、コストセンター・プロフィットセンター議論

 私たちが勤めている会社視点で見ていきましょう。まず大前提として、会社はどこまでいっても、売上や利益をあげることが重要視されます。そうでなければ、会社は存在することができません。

 収益を上げるのはどこの部署でしょうか?営業部門です。なので、営業部門の成果は売り上げの数字となります。とても明確。では、情シスはどうでしょうか?売り上げを上げない情シスでの活動は費用です。収益・費用・利益の3つだけで考えれば「費用」。

 会社を存続させるために、情シスができる貢献。それは、利益を最大化するために、費用を現状維持もしくは費用の削減になります。とてもシンプル。

 しかし、新しい疑問が浮かぶはずです。「いやいや、情シスの活動次第では、収益に貢献するでしょう。そこはどう考えるの?」というもの。最近のDXなんかでもよくこの辺りが議論になります。

 ちょっとだけ他の部署に目を移しましょう。

 たとえば人事部。人事部が採用強化を図り、とても優秀な人材の採用ができました。研修により、会社全体のスキルがアップしました。総務部がおこなった新しい働く環境の整備。効率が明らかに上がりました。その結果、収益に良い影響を与えることができました。

 これって、ITで言われることと全く同じではないでしょうか?

 つまり、どんな部署であろうと基本は収益や利益を最大化するために活動するのです。ただ、売上に対して直接的な責任を持つ部署(プロフィットセンター)なのか、間接的であり基本的には費用として考えるべき部署(コストセンター)なのかだけの話です。

 情シスのみならず、すべての部署は収益に貢献し、費用を下げ、利益を最大化するという、昔からなんら変わらないとても当たり前の話なのです。むしろ、この議論の前提となっているコストセンターだから収益や費用を考えなくて良いという考えがおそろしい。

DXや顧客体験価値の話をする前に、自部署のコスト構造を理解しているか?

 多少の意訳は物事をうまく進めるためには必要ですが、物事の基本は理解するべき。その基本とは、自分たちはコストなんだという意識。この意識を持つために必要なものが会計の知識です。

 この基本である会計の知識をもたずに、情シスやIT部門はプロフィットセンターになるべき・・・なんて話をするからおかしくなるのです。

 つねに売上に対して数字責任を負っている営業部門からすると、情シスやIT部門・DX部門が自分たちのコスト意識がないのに「DXだ」「顧客体験価値だ」というのは、少なくとも気分が良いものではない。一度でもいいから、数字に責任負ってみろよと言いたくなるはず。

 ITはとにかくお金がかかる。経営陣からすると、もしかしたら「情シス・IT部門はコスト削減にそもそも取り組んでいるのか?」といった不満を持っているかもしれない。事実、多くの経営陣はそうですが・・・

 まずは本業をしっかりとコスト意識をもっておこなう。この足元がきっちりできてようやく、DXや顧客体験価値の話ができると考えていたほうがいいです。そして、こういった話をするために、会計の知識・用語は共通言語なのです。

<情シスおさえどころ>

 情シスはコンサルでもITベンダーでもない、本社の一つの組織。だからこそ、会計の言葉を使って会話をするというのは大きな武器になるのです。外部のITコンサルが経営層と会話できる一つの理由は、お金周りの会話ができるからです。
 どうしても、ITの技術に行きたくなるのはわかります。それが本業ですから。でも、そのIT技術は専門性が高く、周りは理解できないことが多い。だからこその会計の知識なのです。

情シス管理会計講座の全体構成

 情シス管理会計講座は、3つの章にわけて丁寧に説明します。

 第1章は情シス管理会計を理解する上での前提知識。一言で会計と言っても、管理会計と財務会計の2つの考え方があります。PLとBSの違いくらいは大雑把にはしっておきたい。多くは世の中に出ている本に譲りますが、情シス管理会計を知る分には問題ない程度に説明をします。

 第2章は、情シス管理会計を進める上で、会計用語をベースに説明。はっきりって、情シスのお金まわりの管理はとにかく面倒。だからこそ知っておく必要がある。

 第3章は情シス管理会計 応用編。実務において知っておくと説得力爆上がりのよくあることを具体的な事例を通して「応用編」としてご紹介します。

 皆様の会計に関する理解がすすみ、日々の活動に取り入れられ、一つでも多くの情シスの価値が認められることを願います。

各章・トピックは順次更新を予定しています

第1章:はじめての情シス管理会計
・経営視点・営業部門視点
・情シスの活動が「費用」となる理由をPLから解説
・管理会計と財務会計の違い(管理会計の注意点と税務)
・投資・生産性向上等考え方

第2章:知っておくべき情シス管理会計の重要ポイント
・情シス・プロジェクト予算管理(計画・実績・見込み)
・経費と費用と資産
・減価償却と計上
・PLとキャッシュアウト(一括払い)
・配賦
・変動費と固定費

第3章:情シス管理会計 応用編
・ROI(投資改修計画)
・生産性向上と人件費
・年度予算と投資予算
・IT投資計画での注意点(データ移行費)
・IT投資予算はどうやって決定されるか?
・目標設定