「情シス」に続く検索ワードを分類してみる
本記事は、冒頭から遠回しの説明をしてますので、結論を先にお伝えします。 情シスの価値をあげるたった一つのこと。それは普段から、何を目的として仕事をしているのかを考えるということです。
できるだけ短く、そして最後に理解が深まりますので、ぜひお付き合いください。
「情シス」と合わせて検索されるワードを見ていると、ざっと3つに分類されます。
一つ目が調べもの。「適正人数」「仕事内容」「資格」「年収」「転職」といったもの。世の中一般的にはどうなっているのか。そういった情報・事例を調べている。
二つ目が、何から悩みや課題があって、そのソリューションを探しているもの。「アウトソーシング」「英語」「DX」「効率化」「コンサル」がそれにあたります。
三つ目が情シスに対するネガティブワード。これらをみていると、さらに3つに分類できます。
- 仕事ぶりに関するもの
使えない・無能・役に立たない・いらない - 印象に関するもの
偉そう・うざい・受け身 - やりがいに関するもの
嫌われる・つまらない・評価されない・忙しい・つらい・きつい
❶❷は、多くは情シス以外の部署の人たちが、情シスに対してなんらかの不満を持って検索しているとみてよいでしょう。一方で、❸はあきからに情シスで働いている人が、悩んで検索している。
参考までに、どこの本社にもよくあって名称がだいたい同じである「人事部」「総務部」でも見てみました。多少違いやそれぞれの部の機能の特徴はありますが、同じようなネガティブワードが出てきます。(その中で、「人事部 頭 おかしい」は特徴的かも・・・)
さて、世の中には自分の力で「どうにかなる世界」と「どうにもならない世界」があります。❶❷なんかは、なにをどうやっても、結局あなたではない人がどうとらえるか。どうにもなりません。残るは❸。ここは自分が今やっていることをどう捉えるか次第。これが状況を突破するヒントになります。
3人の障害解析担当
さて、理解を深めるため、事例をつかって考えていきましょう。これを読んでいる方は、情シスで働いている方が多いと思いますが、「立場を変えて考える」ということをやってみます。
あなたは情シスではなく、会社の中で売り上げを上げている部門のリーダーをしています。そして、お客様向けに大きな売り上げが期待できるイベントを考えています。
さて、そんな中、そのイベント集客のための予約システムがうまく動いていないという連絡が入りました。早速あなたは、予約システムの開発・運用をしている情報システム部にいき、状況を確認します。
情報システム部のエリアに到着しました。何人かのメンバーが一生懸命仕事をしているようです。せっかくなので、ひとりひとり、話をきいて状況を把握します。
一人目の情報システム部員
情報システム部の一番入り口に近いところに1名座っています。早速聞いてみます。
「どうですか?、原因は分かりそうですか?」
その情報システム部員は入社したばかりのようで、あなたが誰かわかっていないようです。そして、知ってか知らずかこう返答しました。
「いやぁーわかんないですよ。ぶっちゃけ、上司に言われてやってるんですよ。これ、僕の担当じゃないですし。とりあえず頑張りますけど、担当がいるわけだし、その人がやればいいんじゃないですかね。意味あるんですかね、僕が障害解析する意味。」
二人目の情報システム部員
情報システム部のエリアの真ん中あたりで障害解析にあたっているメンバーを見つけました。同じように状況を聞いてみました。
「解析アプローチまでは確定して、いまログの取得と同時にできるところから分析を始めています。おそらくあと3時間はかかるでしょうが、おおよそ原因が判明すると思います。障害はシステムを知ることもできて、とても勉強なりますね。この件が終わったら振り返りをして、さらにシステム品質をあげて、安定稼働させていきます。」
三人目の情報システム部員
情報システム部のエリアの奥で、ホワイトボードにいろいろとまとめている人がいました。声をかけます。
「イベントの影響は大丈夫ですか?おそらく、3時間で原因が判明、復旧までの見込みが今のところ6時間です。いま、夜10時なので朝方には復旧すると思います。状況は逐次連携しますので、予約再開の準備をお願いします。
今回のイベントは情報システム部としても重要さを理解しているので、全力を尽くします。絶対に今年のイベントは昨年対比150%達成しましょう!!」
あなたは誰と仕事がしたいと思いましたか?
同じ障害解析をしていても、いろんな人がいますね。ちなみに、来年もイベントをやる予定でいます。さて、ここであなたに質問です。
仕事を頼みたいと思った情シス部員は誰ですか?
一緒に仕事をしたい情シス部員は誰ですか?
また、10年後により活躍していると思われる情シス部員は誰でしょうか?人から一目置かれ、頼りにされる情シス部員は誰でしょうか?
この3人は障害解析という同じ仕事をしています。違いは見ている先、目的です。目的が変われば、結果的に今やっている仕事に対する意識は自然と変わります。それは結果的に仕事の品質、普段の発言や行動に現れ、最終的には周りからの見られ方に影響します。
情シスの価値をあげるたった一つのこと。それは普段から、何を目的として仕事をしているのかを考えるということです。
一人目の情シス部員はこうみると論外に見えますが、案外こういった情シス多いです。言われたことをやる受身体質。
二人目の情シス部員は最低限目指したい。ただ、さらに情シスの価値をあげたいとするならば、もう一歩踏み込みたい。
三人目の情シス部員が見ている先・目的ってなんでしょうか?言語化するならば、「共通の目的」「業務影響」「相手の立場の理解」といったことがあげられます。だからこそ、困っている相手に対して、まずは相手の困りごとに焦点をあて、それに合わせて会話をしている。
この三人目の情シス部員の価値。残念ながら、あなたの周りにはこの価値がわからない人は一定数います。必ずいます。でも、安心してください。みている人は必ずいます。多くのそれは、会社の中での重要なキーパーソンです。
ここに紹介した考え方は、目新しいことではなく「3人のレンガ職人」「3人の石切職人」といった様々なかたちで紹介されているものです。
情シスはどこまで行ってもコストセンターであり、売り上げといった数字で価値を示すことができません。だからこそ、縁の下の力持ちとして普段からこういった考え方で仕事をすることが重要であり、情シスという役割を考慮すると「3人の●●」でのエッセンスは非常に参考になるのです。
あらためて考える、情シスの価値とは?
情シスの価値。それは、事業を行っている会社のシステムを管掌するという立ち位置を理解すると明確になります。どこの部署も、そして、外部の人たちは真似できません。情シスはコンサルやベンダーと同じことをやってはいけないとも言えます。
❶会社のシステム全体を知っている
多くの会社でベンダーやコンサルが入り込んでいると思います。しかし、どこまでいっても全ての会社の情報には手が届きません。しかも、NDA(秘密保持契約)を結ばなければならない。情報を知ること自体、ハードル高いのです。
しかし情シスは会社のこういった情報に触れることができる。全社のシステム・IT全てを知ることができるんです。
また、多くの情シスは社員番号や関連するID、マスター情報を管理している場合が多いです。どんなシステムでもキーとなる情報は重要であり、これからますますデータ活用が進んでいくことを考えると、貴重な組織であることが理解できるはずです。
❷会社の業務を知っている
もちろん、業務を担当する部門や実際のオペレーションなどすべてを理解することは時間的制約から不可能です。しかし、本社にある組織だからこそ、全社横串で業務を理解できる。
人事給与会計といったどこの会社にも共通してある業務から、売り上げを上げる業務部門の業務。こういったことを全体最適で知ることができるのです。
経営課題や経営レベルでDXの提案を行いたいと考えているコンサルだったら、喉から手が出るほど欲しい情報にアクセスできる・・・そんな組織が情シスなのです。
❸課題解決の手段・仕組み(IT/デジタル)を知っている
今の世の中、ITやデジタルを知っているというのはそれだけで大きな武器になります。PC・タブレットといったデバイスや端末、クラウド、多くのパッケージ製品。ITやデジタルをちゃんと理解するには、ある程度の経験が必要となります。本だけ読んで、すぐに何かできるような簡単なものではありません。
そういった苦労から得た知識・経験は強力な強みとなり、進め方さえ間違わなければ経営課題に対して提案ができます。
コンサルやベンダーに多くのことを丸投げしている情シスを見ますが、とてももったいない。価値を見せるチャンスですし、なにしろこんなに面白い仕事はなかなかないです。
最後に、会社や働いている環境によっては、ここでお伝えした考え方がそもそも文化としてないところがあるのは事実です。環境は自分でどうこうできません。そんな状況はつらいのひとこと。無理しすぎは体に良くない。会社は星の数ほどあります。
短期間で転職を繰り返すのは問題ですが、「環境を変える」ことはあなたを大きくステップアップさせてくれる可能性があることは頭の片隅に置いておきましょう。それだけで少しは楽になるはずです。