いまだから考えてみよう、「情シスは忙しい」は本当なのか
「情シスは忙しい」。よく耳にする言葉です。でも、本当でしょうか?ぜひ、隣の部署の人に聞いてみてください。みんな「自分のところは忙しい」と言います。どこも忙しい根本的理由は同じです。しかも、それは今に始まったことではない。昔から同じ。
問題意識と部下に興味がない部門長、一定数の仕事しない人がいて、責任感が人よりあるあなたに大量の依頼事項と問い合わせが集中している。だいたいこんな感じです。
さて、部門長と仕事しない人。あなたの力でどうこうできるでしょうか?できないですよね?では、あなたにふりかかる依頼事項や問い合わせなど。これはどうでしょう?全てとは言いませんが、かなりの部分をあなたの力でコントロールできます。
このコントロールできるところに、あなたの貴重な時間と労力を費やすのです。多くの人がここを理解せず、自分でコントロールできない上司や仕事しない人と不毛なやり取りをしています。もしハッとした方がいるようであれば、今すぐやめましょう。いいことないです。
頭に叩き込んでおかなければならない3つのこと
本題に入る前に、覚えておきたい3つの前提知識を。普遍の法則と言ってもいいです。仕事を減らす・・・いや、劇的に減らしたいと考えるのであれば頭に叩き込んでおく必要がある。言い方を変えると、効率良く仕事をする人・パフォーマンスが高い人は必ずやっていることです。
其の一:パーキンソンの法則:第1法則
「仕事の量は、完成のために与えられた時間を全て満たすまで膨張する」という有名な法則。ちなみに第2法則は「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」です。
1日の所定労働時間があります。多くの会社では年間・月間の残業時間が決められているはずです。多くの人が、そのギリギリの時間まで働いています。締め切りがある仕事の場合は、その締め切りギリギリまでやっているはず。
情シスの仕事もだいぶあてはまる。例外があるとすれば、システムは24時間365日稼働するわけですから、トラブル発生時はいつ何時でも連絡が来るということ。そして対応しなければならない。
え?当たり前?実は、その考えを変える必要があります。
ここで覚えておきたいのは、「仕事が終わらない」というのは、思い込みの可能性が非常に高いということ。自分では必要と思っていたが、実はやらなくて良いことをやっている。自分を疑うとういことです。
其の二:ECRS(改善の4原則)の「E」
英語の頭文字をとって、イクルスとよびます。むかーしからある考え方で、いろんなサイトでも業務改善の手法として紹介されていたりします。ただ、これを本気でやっている人って私はあんまりみたことない。たぶん、知識だけで多くの人が実際にはやってないんだと思います。
この考え方。実はかなり最強で、情シスと相性ぴったりなんです。なぜかというと、とにかく多くの情シスでは「これまでやっていたので」という仕事が多い、多すぎる。
効果が高い順に並べるとE>C>R>Sとなります。一応すべて紹介しますが、やることは一番最初の仕事をなくすことを考える「E:Eliminate」だけに絞る。なぜなら、ECRSをやろうとすると、ほぼ多くの人は、一番手をつけやすい簡素化(S)ばかりを考え始める。やめる(E)のは怖く、仕事を一緒(C)にしたり再配置(R)するのは考えるのが面倒・大変・時間がかかるので放棄するんです。逃げちゃダメだ。
簡素化は何かを標準化したりツールを入れたりと、IT好きのみならず、多くの人が手軽にはじめられ、やった感を得られることができる。さらに、周りに説明する時も都合が良く、さらには納得度が高いように聞こえる。
だいたい、この罠にハマって結局仕事が減るどころか、新しいツールの運用や設定で、仕事が増えたりしています。本末転倒。
E:Eliminate(排除)
今やっている仕事が無くせないか?を考える。あたりまえですが、仕事がなくなるのが一番効果が高い。情シスで仕事をしていると、なぜやっているのかわからない、昔から代々受け継がれている仕事があったりします。最悪、システムごと存在していたりする。
C:Combine(結合)
今やっている2つの仕事があるとして、それを一つにできないか?もしくは同時に一緒にできないか?2時間でやっていることが1時間で終わったら効率は倍ですよね。
R:Rearrange(再配置)
仕事の順番や場所、担当者を再配置・交換・変更するというもの。担当者というとギョッとするかもしれませんが、タスクを整理して似たような業務を特定の人に集めることも含まれます。
S:Simplify(簡素化)
作業を標準化・パターン化したり。ITやツールを導入して自動化するのもここ。注意して欲しいのは、案外情シスがすぐ手をつけるのがこれなので注意が必要。真っ先に考えるべきは、「無くせないか」です。
其の三:丁寧・完璧・頑張りすぎは自己満足
仕事を丁寧に、そして完璧に。一歩引いて考えてみてください。あなたの仕事の評価をするのはあなたではありません。それを受け取った相手です。であれば、さっさと相手に渡してフィードバックをもらったほうがいい。
丁寧に、そして完璧を目指す方は、時間ぎりぎりまで頑張る傾向がある。悪循環なんですが、多くの人が気がついていない。パーキンソンの第1法則を思い出しましょう。
IT関連で仕事をしている人は、これを理解していない人がとても多い。そういった人に見られる典型的な行動として、やった仕事に対して何かしらの「ポジティブではない」コメントが返ってきた時に、僕・私はこんなに頑張ったのに・・・という反応をしちゃう。
本来はフィードバックという仕事の質をより高めるチャンスなのです。仕事に対する考え方が気がつかないうちに自己満足になっているので、こんな反応になるのです。
単純にこれで時間をものすごく浪費、そして損している人が多いです。
情シスで働くあなたの仕事量を減らす鉄板の4ステップ
Step1.「与えられた時間を限界まで使って仕事をしている」ことを理解する
まず、パーキンソンの第1法則。これを信じましょう。あなたの仕事は減るのです。あなたは与えられた勤務労働時間のギリギリまで仕事をしているだけでです。その中で精一杯頑張ろうとしているだけなのです。何の疑問ももたず、気がつかないうちに。
だれが何と言おうと、これを信じることが最初のステップです。
Step2.自分の仕事の棚卸し
自分の仕事の棚卸し。慣れていない人はここで大体失敗します。重要なのは棚卸しの粒度。細かすぎてもダメだし、荒すぎてもダメ。その上で、全体を網羅しなければならない。考え方はMECEです。やり方は次の通り。
- 思いついたタスクを、とにかく列挙する(粒度は無視)
- 似たようなタスクをグループ化する(まとめる)
- グループ化したものに名称をつける(粒度を合わせる)
安心してください、一度できれいに整理できることはまれです。❶〜❸をいったりきたりするかもしれませんが、それで正しいです。最終的に、自分でしっくりくればOK。そのグループ化についた名称が、減らす仕事を考える上でちょうど良い粒度です。
Step3.仕事をやらなくしてみる
いよいよあなたの仕事にメスを入れる時です。ECRSの「E」だけをやる。その仕事をなくすことを考え抜くのです。
注意しなければならないのは、「この仕事はやらなければならいんだ」という思い込み。アンコンシャス・バイアスと言われるもの。だがしかし、気をつけても気をつけても、これに陥ります。
ここでは、その思い込みにできるだけ陥らないために、超おすすめの実績ある方法をお伝えします。それは、自分自身への質問。これに、明確に答えることができなければ、それは無くしても良い仕事です。
クレーム来たらどうしよう。何が起こるかわからなくて怖い。大丈夫です。なんとかなります。思い切ってやりましょう。
ちなみにこれ。要件定義で「あったほうが良い」で、要件が膨大に膨らんだ時、片っ端からぶった斬る時にも使えます。
- それをやめたら、何が起こるのか?
- それをやめたら、困る人はいるのか?
- それをやめたら、業務が止まるのか?
少しだけ補足。とはいえ、いきなり踏み切れないのもわかります。その時は、ぜひ以下2つのやり方を試してみてください。基本は「E」の手法ですが、ソフトランディングさせるやり方です。
とにかく、勇気を持ってやめるのだ!!
徐々に手を抜いていく
徐々に手を抜いていってみる。しかも、こそっと。今やっているその仕事が不要なのであれば、仕事の質が低下しても誰からも何も言われない。必要な仕事の場合は、必ず誰かが何か言ってきます。
トライアル宣言
徐々に手を抜くといった手法が取れない場合は、正面突破。業務効率を上げるために、そして仕事を見直したいため、「一定期間、今やっている作業をとめて影響をみたいです」と宣言しちゃう。
そう、宣言するのです。トライアルというマジックワードと共に。それで、やっぱり必要だね・・・となったら戻せばいい。
1週間目はいろいろと言われるかもしれない。1ヶ月経つとどうでしょう。人間は忘れる生き物。業務に必要なければ、多くの人がそんなことすら忘れてしまう。周りが気にしなければ、トライアル終了宣言もせず、この世から仕事ごと消し去る。そんなもんです、世の中。
他にないの?とお悩みのあなたへ
タスク自体をなくすことが目的ですが、それ以外に少しだけ覚えておくと良いこと。何度も言いますが、まずはタスク自体をなくすことを最優先です。
- 定型の仕事を都度受付でやっていないか? → まとめてやる
- 似たような会議に何度も出席していないか? → どっちかにまとめる
- 自分がやる仕事なのか? → 本来やるべき人にお願いする
ツールでやるとかフォーマットを揃えるとか提携業務に置き換える・・・みたいなのは、大体多くの皆様がやっているので、割愛します。ただ、それはECRSの「S」。一番効果が低いとされるということを忘れずに。
<情シスおさえどころ>
仕事の自動化やツール化、システム化の相談が情シスに来たとします。多くの情シスは、そのままツール選定などに入ります。優秀な情シス部門はどうするか?その対象の業務がそもそも必要なのか?その前提を疑う。この発想が持てるかどうかが、提案できる情シスになれるかどうかのポイントです。
Step4.やらなければならない仕事をうまくやる
Step3まで本気でやると、かなり仕事量は減るはずです。残った仕事は、あなたがやらなければならない必須の仕事。となれば、次は仕事をどう上手く進めるかという段階にきます。
この辺りをまとめた記事がありますので、ぜひどうぞ。