【情シスの組織運営】抑えるべき11の原理原則と4つのステージ(アンチパターン付き)

【情シスの組織運営】抑えるべき11の原理原則と4つのステージ

情シスの組織運営は、一般定な組織運営の考え方に加え、「システム特有の考慮」が必要です。それは、部門戦略のみならず組織設計や意思決定といった様々なところに関係します。

これまで3社の立て直しから強化をおこない、今も現役で情シスの責任者として仕事をしている人間が、これまでの経験や世の中一般的なフレームワークといったものを織り交ぜてシンプルにわかりやすく解説します。

興味があるところだけでも読めるように編集してありますので、ぜひ目次からどうぞ。

情シス組織運営における11の原理原則

次にあげる11の原理原則は、一般的な組織運営の内容もあれば、システム独自の考慮もあります。

この11の原理原則に情シスのトップが明確に答えられない組織は、最近はやりであるDXなんてまだまだ先の話であり、通常業務がかなり危ういと判断して間違いないです。

※01〜07までは、マッキンゼーの7Sをベースとしています
※08〜11までは、4大経営資源の「ひと・もの・かね・情報」をベースとしています

01. 部門戦略

情シスは組織です。最低でも、年間の部門戦略は必要です。これを策定するためには「会社の中期計画」「経営課題」「他部門からの期待」とともに、「情シスの課題」を理解できていないと描けません。

部門戦略が明確になると、情シスが「何をするべきか」が明確になります。言い方をかえると「やらないこと」を明確にするということです。

世の中の情シスは「何でも屋」「便利屋」「雑行係」になっているところも多く、この状態から抜け出すためにも、情シスの部門戦略は重要となります。まれに「何でも屋」が部門戦略になっているところがありますが、未来はないです。

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02.組織設計

世の中一般的に「組織設計の5原則」といわれる考え方があります。(原理原則のさらに原則で複雑ですみません)これは、会社規模や戦略によって形をかえる情シスにおいても、変わらない原則として重要です。

情シスで働いている方が「なんかおかしいな」と感じること。「情シスが無能では?」と感じた時の多くの原因は、突き詰めていくと、この5つの原則のどれかにあてはまります。

情シスだから、システム特有の・・・と勘違いしそうですが、多くの情シスの問題が、この組織問題から来ていることがわかるかと思います。

専門家の原則(分業化)

組織というのは仕事を分業し、専門性を高めることで生産性の向上をはかります。情シスは、その名の通り、情報システムをあつかう文書。専門性が高く、最新の技術やトレンドを理解する必要があります。それは、分業化を意識しなければならないということを意味します。

権限責任一致の原則

与えられた権限と責任は同じ大きさにしなければならないということ。多くの情シスはこのバランスがおかしく、権限は無いのに責任が大きいという状態が散見されます。

統制範囲の原則

一人の管理者が管理できる部下の人数には限界があり、目安として5〜10人といわれています。これを超えると、一般的にはさまざまな問題が発生しはじめると言われています。

命令統一性の原則

指示命令系統は常に一人の上司にしましょうというもの。複数の人から指示がくるとなると、現場が混乱するのは容易に想像できるかと思います。

例外(権限委譲)の原則

業務の切り分けのひとつとして、「定型業務/非定型業務」という分け方があります。上司は、非定型業務に専念し、定型業務は部下にどんどん権限委譲していきましょうというもの。

無能な情シスの場合、上司が定型業務、部下が非定型業務をやっている場合があります。

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03.ルールの整備

情シスという組織において、守らなければならないルールを明確化します。ベースとなるのは職務分掌規定。これ自体、案外守られていないことが多いです。

特に注意したいのが、職務分掌によく記載のある「重要事項」と言われるもの。表現があいまいなこともあり意識が薄くなり、現場が会社の方向性を左右するような製品選定をしていたりというのはよくあります。

次にあげる項目が、最低限の整備され、守るべきルールです。

  • 会社のルール(職務分掌)
  • 意思決定に関わるプロセス
  • 報告・連絡・相談

04.共通の価値観(大切にすべきこと)

情シスに所属するメンバーが共通のものとして、大切にすべきことの定義になります。ちょっと似ている「01.部門戦略」は、情シスが会社のひとつの組織として、会社に貢献するための考え方です。

ミッションやビジョンといったものでも、定義の形はなんでも良いのですが、重要なのは「私たちはなぜ情シスで仕事をしているのか?」を同じ言葉で所属する全員が答えられる状態にするということです。

05.スキル定義

情シスにおけるスキル定義は難易度高いです。しかしながら、少なくとも、情シス責任者の頭の中に、大枠でもスキル定義の考え方がないと、情シスは強くなれません。スキル定義がなくて強くなった組織は、メンバーが優秀かラッキーなだけです。

参考にするのはIT業界のスキルマップやIPAから出ているUISSといったもの。経済産業省がだしているデジタルスキル標準。プロマネ系だとPMIのPMCDF。考え方でいえば、CMMIも参考になります。

とにかくIT系のスキル定義は多種多少にわたり、難しいからこそ各種団体の有識者が頭をひねって考えています。それを参考にする手はないです。

06.採用・人材育成

組織設計が決まり、必要なスキルが定義できたら、それを実行する人材が必要になります。ジャストな人材は、なかなかいないでしょう。だからこそ育成が必要ですし、いまの人材で難しいと判断された場合、もしくは経験が一定量必要な場合は、採用をしなければなりません。

07.組織文化

情シスはひとつの組織ですので、会社の組織文化の影響を大きく受けます。しかし、情シスで働く人たちはIT業界からもさまざまな影響を受けている場合が多いです。

わかりやすい例をあげるとすれば「働き方」。リモートワークや各種ツールを利用しての生産性向上といったのは、特徴的です。こういった文化を情シスのトップが意識的につくっていく必要があります。

08.情シス責任者の適正

多くの情シスという組織において、誤った判断で責任者が任命されていることがあります。それは、「ITに詳しいだけ」ということで責任者になるケースです。

基本は仕事ができる人をおくべきです。多少のITの知識は後付けでなんとかなりますし、ベンダーなど外部の力を借りるという選択肢も存在します。

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09.情シスの5つの神器(重要成果物)

組織を運営していく上で、可視化が必要な必須の成果物です。組織の規模によって重要度は変わるものの、適正な組織運営・意思決定をするのであれば、どれもあるべきです。

神器1.システムロードマップ

ロードマップと書いていますが、中期計画のスケジュールでも良いです。重要なのは、今後どんなシステムが新規に追加され、そして捨てるのかを3〜5年先まで可視化されているものです。

このロードマップは情シスのみならず、業務部門との会話にも利用されます。

神器2.セキュリティ・ガバナンスに関する成果物

セキュリティ・ガバナンスについてのルール・ガイドラインが記載されている成果物です。組織が小さいうちは意識されないことが多いですが、一定の規模になると必須となります。

神器3.システム関連の成果物

情シスはシステムの専門家集団です。その組織に、次にあげる成果物が存在しない場合は、情シスとして適正なパフォーマンスで機能していないと断言して良いです。

これら成果物は、問題発生時や将来を考える際の重要な成果物です。

  1. システム鳥瞰図(全体図)
  2. システム一覧
  3. IF一覧
  4. ネットワーク構成図
  5. 契約一覧

神器4.組織図(組織・人材)

ひとりしかいない情シスを除き、トップには情シスの責任者がいて、その下に部・課・チームといったグループが存在し、その中に人がアサインされます。

組織図が存在しない情シスは、効率的に動けておらず、パフォーマンスが低いです。

神器5.意思決定・承認に関するルール

一定規模になると、これらはワークフローの中に取り込まれたりします。一方で、メールや口頭で行われていることもあります。

重要なのは、「重要事項」だったり「一定金額以上」がそれを判断するべき人で判断されているかどうかということです。

10.IT予算管理

情シスにおけるITに関わる予算管理というのは多岐に渡ります。会社の規模が大きくなってくると、IT投資の規模も大きくなり、仮勘定やら配賦やら減価償却やらと複雑になってきます。その横で、日々の運用費や故障対応、一時的な出費などが発生します。

それらの予実管理を、財務会計と管理会計の両面で管理しなければならず、なかなか骨の折れる仕事です。

「IT予算食い過ぎ〜」といわれる情シスほど、ちゃんと管理ができておらず、他部門への説明ができてないという悪循環に陥っています。

11.システムに関する会議体の設置

会社にはかならず正式な会議として取締役会・執行役員会といった重要な会議が会社の規定として定義されています。すすんでいる会社の場合、同じようにシステムに関する会議が定義されています。

呼び名は「システム会議」「システム戦略会議」「IT投資委員会」など様々ですが、重要なのは会社の役員クラスが参加しているということです。

情シスのステージ

情シスには4つのステージが存在します。感覚的ですが、多くの情シスがおそらくステージ0です。これには、組織の成長自体が難易度が高いということに加え、情シス特有の「システムという専門性」という要素が入ってくるからと考えています。

※考え方は組織の成長段階の考え方である「タックマンモデル」を参照しています

Stage0. 形成期

このステージは、チームが出来上がった時点のことを指します。チームメンバーはお互いのことをわかっておらず、みんながさぐりさぐりの状態です。

さて、ここでみなさまに質問。同じチームのとなりの方は何をやっているかご存知ですか?その答えが「なんとなく」もしくは「わからない」の場合は、チームが出来上がった状態から組織としては成長していないとなります。

そして、この状態の情シスというのは多いです。

Stage1. 混乱期

お互いを知ってくると、それぞれの意見の違いが明確になってきます。衝突することもあるでしょう。その結果、チーム全体のパフォーマンスが形成期より落ちます。そういった過程を通してお互いを理解するというのが混乱期です。

多くのの情シスでは、この混乱期を避ける傾向が見て取れます。これが、なかなかStage1に踏み込めない大きな理由です。

Stage2. 統一期

混乱期を通過することができると、お互いの違いを認め合い、そのうえで共通のゴールを目指して協力するということができる状態となります。これが、統一期です。

Stage3. 機能期

統一期からさらにすすんだのが機能期。特徴は、各自が能動的に動くことにより、チーム全体のパフォーマンスが最大となるということです。

アンチパターン

情シスがうまく機能するための正攻法というのはなかなかありません。一方で、これをやると必ず失敗するというアンチパターンは存在ます。

情シス責任者が人よりITを知っているだけで選任される

情シスは「IT」「デジタル」を知っている人でないと務まらないと考えている企業が多いです。確かに知っておいた方が良いですが、それより重要なことがあります。

それは、仕事がちゃんとできるかどうかです。ITやデジタルを知っていても、仕事がそもそもできなければ話になりません。

ITやデジタルを知っているが仕事ができない人が情シス責任者になった場合、よくあることは、専門用語で周りをケムにまき、実質は効果がないIT案件を会社に承認させ、実行するということ。

根が深いのは、このIT案件の妥当性を判断できる人が会社にいない場合が多いということです。ボディブローとなって、月日が経てば経つほど、会社にダメージを与えます。そして、それにみんな気が付かないことが多いということです。

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情シスの組織運営は、通常の組織運営の難しさに加え、IT・デジタルといった専門知識が必要となります。そして、専門だからこそ周囲からの理解がなかなか得られないという、難しい事象も抱えます。

しかし、だからこそこれがうまく機能すると、会社は必ず強くなります。IT・デジタルが会社にとっての強みとなります。

必ず成功する方法というのはないです。しかし、必ず失敗するというパターンはあります。みなさまの組織での参考になれば幸いです。

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