情シスの転職が難しい理由と対策【採用責任者10年間の分析・解説】
情シスの転職で難しいこと。もちろん、倍率とか求められるスキルとか条件面が合わないとかありますが、多くの方が理解していない、とっても基本的なことがあります。それは、採用面接を受けようとする会社を理解していないから難しくなると言うことです。
私自身も3社(2022年12月現在)の情シス面接を受けています。断られたこともありますし、一方で私から断った会社もあります。一方で、情報システム部門の採用担当として多くの方と面接をしてきました。採用する方・お断りする方、辞退される方もいらっしゃいます。情シスという組織に関わって、採用する側・される側両方の経験をして、10年以上になります。
情シスはその名の通り、事業をおこなっている会社の情報システム部門です。会社の本業をおこなっている事業部門をサポートする本社のひとつの組織であり、残念ですがITエンジニアのためにある会社ではありません。
情シスの転職が思うように進まない方は、疑いようがない「情シス」という会社の中での組織の役割を理解していないがために、企業側から「ミスマッチ」と判断されてしまうことは案外多いです。
仮に無事入社したとして、この部分の理解が不十分だと、今度は皆様が「こんなはずじゃなかった」と苦しむことになります。
なぜ、会社を理解する必要があるか?
例えば、ベンダーから面接を受ける方でよくある転職理由の一つが、「ユーザーともっと近いところで仕事がしたい」というもの。これ自体はとても素敵なことです。
さて、ここでちょっと考えたい。そのやりたいことが実現できるのは、会社の従業員数が100人と1万人の2つがあったとき、どちらでしょうか?ついでにもう一つ。転職理由が「IT企画がしたい」だったとして、それを実現できるのは、会社が成長期にある会社と衰退期にある会社、どちらでしょう?
受けようとしている会社を理解することは、「自分のやりたいことが本当にできる会社かどうか」を理解することにつながります。
求められるスキルは頑張って勉強すれば後付けでなんとかなります。成果をだせば給料は上がるでしょう。これらは自分の頑張り次第でどうにかなる可能性がありますが、「会社」だけはあなたの力でどうにもなりません。
「事業部門をサポートする組織が情シスである」という基本を理解することは、「自分はなぜ、その会社の情シスで働きたいのか?」を考えることになります。この点が明確になると、面接で良いやりとりができますし、格段に情シス面接の難易度が下がります。
面接で、「なぜ、こんなことを聞かれるんだろう」と言う疑問も随分と減るはずです。目先のテクニックにこだわるのではなく、情シスと言う組織が存在する「会社」をしっかりと理解しましょう。
情シスの転職で、会社のことを理解するときの5つの手順
会社のことを理解するためには、次の5つのステップで整理するとスッキリします。
全ての考え方の大元・基礎になる「法人としての位置付け」
情シス転職の成功/失敗に直結する「会社のステージ」
会社の雰囲気やカルチャーを知る上でヒントとなる「業界と事業内容」
情シスの業務内容に影響する「会社規模」
入ってから「しまった!」とならないように必ず抑える「募集背景」
情シスの転職で、会社のことを理解するときの5つの手順(説明編)
Step1. 全ての考え方の大元・基礎になる「法人としての位置付け」
「法人としての位置付け」と言われて、ピンとくる人は少ないと思います。でも安心してください。むずかしくないです。多くの皆様が勤めているのは○○株式会社、もしくは株式会社○○。利益をあげなければあたり前ですが潰れちゃいます。
位置付けは「営利法人」に分類されます。一方で、ITパスポートなどの試験をおこなっているIPA。これは省庁から独立した法人で、省庁のお手伝いをしっかりと行うことを目的として設立されており、「独立行政法人」に分類されます。
「利益を上げる事業部門」をサポートする情報システム部門なのか?「省庁から委ねられた仕事をしっかりと実行する部門」をサポートする情報システムなのかで、その会社の情報システム部門の役割が異なってくるのはイメージがつくかと思います。
まず確認するべきは、営利法人かそうでないかです。営利法人以外が転職先として候補に入った場合は慎重に。
できるだけお金も人をかけずに、使い古した技術を使い、事故を起こさず安定運用してほしいというのが会社からのシステム部門に対する期待だとすれば、それはそのまま情報システム部門の予算や組織の成り立ち、業務内容に直結します。
こういったところで、いくら「IT投資をしてほしい、新しいことにチャレンジしたい」と言っても限界があることは容易に理解できるでしょう。
Step2. 情シス転職の成功/失敗に直結する「会社のステージ」
会社は、次に示す4つのステージのどこかに属すると言われています。それぞれのステージで、会社自体の課題と言うものがあり、それぞれに応じて会社からの情シスに期待されることが変わります。
創業期は、ベンチャー企業とも言われたりします。会社自体不安定で情シス部門なんてないかも知れません。とにかくなんでもやらなければならない。場合によっては、営業活動に駆り出されることもあるでしょう。
成長期は、事業拡大のフェーズにあります。IT投資も積極的でITプロジェクトもたくさん立ち上がるでしょうし、人の採用も積極的。つまり、とにかく忙しい。
成熟期はいろんなことが安定しているため、情シスの役割も事故を起こさず安定したIT運用になります。成長期を経て、いろんな人が情シスにもいて、規模が大きい会社だと政治色も強くなる。衰退期に入らないように、大きな事業変革や新規事業といった施策が走ると、とたんに忙しくなります。
衰退期はその名の通りで、IT投資も行われないです。今あるリソースでなんとか情シスをまわしましょうが基本。場合によっては、コスト削減で予算も人も縮小傾向になります。
Step3. 会社の雰囲気やカルチャーを知る上でヒントとなる「業界と事業内容」
業界によって会社の雰囲気やカルチャーは全く異なります。銀行・医療・製造・商社・サービスなどなど会社が所属する業界によって、お堅いのか、自由なのか。ゆったりなのか、バタバタしているのか。ウェイウェイ系なのか、安定なのか。
また、BtoB/BtoCでお客さまの定義も変わります。業界自体が成長期にあるのか、安定期もしくは衰退期にあるのかと言ったことも確認しましょう。
業界によって、そこで働いている人の雰囲気・カルチャーというのは必ずあります。そのうえで、その業界でどんな事業を行なっているかを確認しましょう。
少し付随して、転職候補となる会社が子会社である場合は慎重に。親会社の意向が強く反映される場合、情シスのミッションがそれによって大きく変わってきます。オーナー社長の場合も同様です。
Step4. 情シスの業務内容に影響する「会社規模」
会社規模によって、情報システム部門の業務内容は変わります。こちらで説明していますので。どうぞ。
Step5. 入ってから「しまった!」とならないように必ず抑える「募集背景」
最後にチェックしたいのが募集背景。これは、エージェントに聞けば必ず教えてくれます。教えてくれない場合は、その会社やめた方がいいです。この募集背景を抑えるというのは、先に挙げたStep1 – Step4での自身の分析が合っているかどうかの確認に役立ちます。
あきらかに衰退期にある会社が、「事業拡大」などと言っていたら怪しいと思った方がいいです。堅い業界で成熟期にある規模が大きい会社が、「事業拡大・新規事業」と言っていたら、かなり仕事はハードになる可能性が高いことが伺えます。
会社を理解するということは、遠回りのようで近道
ここまで述べたことは、この記事にある「❷「募集要項」と「企業情報」の情報整理」の「企業情報」の情報整理をさらに細かく説明したものです。多くは募集要項からは見えてこないのと、情シスの転職を考える方の多くの方が見落としている部分です。
会社の成り立ちや背景から情報システム部門の組織としてのやるべきことがあり、それを実行するために「人」というリソースが必要になります。これはどこの会社も同じであり普遍的なことです。会社の理解を通して、自分に合った情シスが見つかれば、その情シスは必ず楽しいですよ。
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